■1:29:300の法則は、ハインリッヒの法則 1:29:300の法則は、米国のハインリッヒ氏が労働災害の発生確率を分析したもので、1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというものです。
同じように、これはビジネスにおける失敗発生率としても活用されており、例えば1件の大失敗の裏には29件の顧客から寄せられた苦情で明らかになった失敗があり、さらにその裏には、300件の社員が「しまった」と思っているが外部の苦情がないため見逃しているケース、つまり認識された潜在的失敗が必ず存在すると言えます。
1:29:300の法則は、供給側の視点で捉えた数字です。隠れている300の潜在的失敗に関しても、あくまでそれは組織の内部の従業員が意識した失敗に関する数値です。しかしながら、ビジネスの価値評価をするのは、すべて顧客の側です。従業員が失敗だと捉えていない事柄の中にも、顧客の側からみれば失敗と判断される事柄も存在するはずです。
では、顧客の視点で見た場合、どうなるでしょう。
『サービス・マネジメント』(カール・アルブレヒト、ロン・ゼンケ共著、ダイヤモンド社)に面白い数値が紹介されています。
●不満を持った顧客の96%は企業に対して何も言わない。
●一般にクレームが1件あると、問題を抱えた顧客が他にも24人存在することになり、そのうち6件は 深刻な問題なのである。
●苦情を訴えた顧客は、たとえその問題が十分に解決されなかったとしても、苦情を訴えなかった顧客よりも、その企業と継続的にビジネスをしようとする傾向がある。
●苦情を訴えた顧客の54~70%は、問題が解決されれば再びその企業とビジネスしようとする。 特に問題が速やかに解決されたと顧客が感じるときには、その数字は95%にまで上昇する。
●企業とのビジネスに問題があると感じた顧客は、その経験について他者に話をする傾向にある。
不満をもった顧客の96%は、企業に対して何も言いません。つまり、1:29:300の法則における29の苦情は、不満をもった顧客のうち、わずか4%が発する苦情にすぎません。
もちろん、単純に比較することは出来ませんが、これは従業員が「しまった」と感じる失敗よりも遥かに大きな数字です。顧客は、企業が失敗を感じている以上に、不満をもっていると言えそうです。
クレームを軽視せず「しまった」という体験を隠さずに対策として生かし、顧客の不満足を満足に変える企業で有りたいと思います。